世界流離日記

『世界流離(さすらい)日記』と読みます。海外旅行での喜怒哀楽の経験を中心に投稿していきますのでよろしくお願いします。なお、このブログの無断転載および画像の無断使用は禁止とさせていただきます。

#078 『河童の世界』を覗いてみた。

妹尾河童さんは、小説家であり、舞台美術家でもあります。彼の代表作である小説『少年H』では戦時中の日本の貧しくて苦しい中でのヒューマンドラマが描かれ、映画化もされました。

 

 
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そんな妹尾河童さんが『河童が覗いたシリーズ』の本を出版しているのをご存知でしょうか。ヨーロッパ編、ニッポン編、インド編の三部作で、河童氏(彼がいつもドライバー氏などのように、氏をつけて呼ぶのが面白い)がスケッチしながら『興味の赴くままに』各地を廻った旅行記です。

 

 
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このシリーズの大きな特徴は全て手書きなこと。これには、読者に直接手渡しで届けるような作品にしたいと言う思いがあるそうです。その河童氏直筆のスケッチと言葉による解説が非常に面白いのです。旅好きだけでなく、美術好きな方にもオススメの本です。

 

 


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なお、こちらが本物のタージ・マハルの装飾。河童氏のあまりにも緻密なスケッチには毎回感動させられます。事実、このスケッチのおかげで河童氏はインドでは特別待遇を受けたりしていました。うらやましい才能です。

 

 

では、簡単に三部作を紹介します。

 

 

①河童が覗いたヨーロッパ(1976年出版)
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297ページにも渡るルポルタージュで、1年間で訪れた国は22ヵ国で、泊まった宿は115部屋

 

ルートは不明ですが、

①イタリア  ②オーストリア  ③フランス

④西ドイツ  ⑤東ドイツ  ⑥ノールウェー

チェコスロバキア  ⑧スイス  ⑨スペイン

ポルトガル  ⑪ベルギー  ⑫オランダ

ハンガリー  ⑭イギリス  ⑮デンマーク

スウェーデン  ⑰ギリシャ  ⑱ソ連

⑲エール  ⑳エジプト  21.メキシコ 

22.アメリカ

を廻っています。おそらく昭和50年前後の旅行のため、ドイツが東西に分断されているところ、逆にチェコスロバキアが1つの国になっているところ、今は無きソビエト連邦があるところに歴史を感じます。なお、⑲のエールとは、アイルランドのことです。⑳以降はヨーロッパじゃないのもご愛嬌。笑

 


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部屋の間取りや各国の車掌の服装などがスケッチと共に紹介されてます。賃貸住宅の広告のような真上から見た見取り図が載っている本なんてなかなかないです。

 


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あとは、各地を廻った時に見たり聞いたり感じたりしたことを綴ってます。

 

 

この本の中にある、『減点法は旅をつまらなくするから、何事も得点法で前向きに旅をした方がいい』という河童氏の考え方が私はとても好きです。あとは『自分が見たのはその国のほんの一部の姿だから、それだけでその国を知った気になってはいけない』という言葉にも、納得。ついついやってしまいがちですがね、反省します。

 

 

②河童が覗いたニッポン(昭和59年出版)
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昭和50年代半ば、つまり私が生まれた頃の日本で話題となっていたものを河童氏が実際に訪れ、詳細に解説しています。点字、京都の地下鉄工事、裁判所、入墨などから、はたまた刑務所まで…。なお、ヨーロッパ編と比べて、スケッチと文章がより詳細に変わっていて、本自体は薄くなってますが読みごたえはヨーロッパ編以上となっております。

 


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点字のページでは、盲導犬ロボットの研究所を訪れてます。未だに実現できていないところからして、相当難しい技術なんだろうなぁ。是非いつか実現化してほしい!

 


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刺青のページでは、入墨と刺青(ほりもの)の言葉の違いを力説。入墨は刑罰のための刻印、刺青は肌に施す装飾なのだそう。へぇー。

 

 

刑務所訪問では、府中と網走を訪れてます。今とはまた違うところもあるのでしょうが、河童氏のアングルからの解説で、刑務所と収容者に対する考え方が変わりました。

 

 

③河童が覗いたインド(1991年)
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私のお気に入りがこちら。1978年と1983年に1ヶ月半ずつ訪問した時のことが本当に細かく描かれています。1ルピーが25円というところにびっくり。今は1ルピー=2円以下だし、街も綺麗になって便利になってるけど、カースト制度や宗教感、売り子については変わってないなぁ。インドに行く前に是非読んでほしい本です。

 



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表紙にもなっているタージ・マハルを空から見た想像図が描けてしまうのは河童氏だからこそ。

 


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白タージと黒タージの話は知ってましたが、スケッチがあるとよりわかりやすくていいです。橋を架ける予定だったことは初めて知りました。実現してほしかったなぁー。

 

 
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インドの電車事情についても細かく描写されてます。気が付けば周りの乗客を巻き込んで巻き尺で座席の長さを測っていたというのが何とも面白いです。だからこそ正確で素晴らしいスケッチが完成するのです。

 


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部屋のスケッチもご健在。2枚目の写真(ウダイプールの宮殿ホテル)はドタキャンされたのに、ホテル外観のスケッチを見せたらスタッフの態度が変わり、翌日スイートルームを用意してくれた(しかも、部屋まで描いたら1/5の値段で宿泊できた!)っていう河童伝説の部屋。好奇心旺盛なインド人たちが大量に集まる姿が目に浮かび、私も思わずニヤニヤしちゃいます。笑

 

  

南インドは未踏の地なのですが、河童氏の解説によると、かなり楽しそうな予感です。特に、マハーバリプラムやマドゥライにはいつか行ってみたいです。

 

 

 

 
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この3冊で共通しているのは、『気になったことはとことん調べ尽くす!』という河童氏の姿勢であり、私とも少し似ているなぁと思います。まあ、レベルが違いますが。河童氏には誰も敵いませんよ。笑

 

 

河童氏の『覗いたシリーズ』は、時代は違えど参考になる資料がいっぱいです。また、今との比較をするのも楽しい読み方です。ご興味ある方は是非ご一読を。