世界流離日記

『世界流離(さすらい)日記』と読みます。国内外の旅行での喜怒哀楽の経験を中心に投稿していきますのでよろしくお願いします。なお、このブログ上の画像の使用は禁止とさせていただきます。

#202 アールブリュット ジャポネⅡに行ってみた。

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この作品はある日本人女性演歌歌手の顔とのこと。さて、誰でしょうか?

 


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今回の旅の一番の目的である、アールブリュット・ジャポネⅡに行ってきました。パリのモンマルトルにある、アル・サン・ピエール美術館で2018年の9/8~2019年の3/10まで催されています。

 

 

アールブリュットのことについては、何度かこのブログで触れていますが、Art Brutとはフランス語で『粗削りの芸術』という意味で、英語ではoutsider artだなんて呼ばれています。日本では、障がいをもっている方や病気を患っている方による芸術作品という意味で使われていますが、海外では犯罪歴のある方の作品も含まれていたりします。

 


そんなアールブリュットでは、有名な名画にはない魅力があるため、私は日本でも時々展示会を見に行きます。それは何なのかと言われると説明が難しいのですが、一言で伝えるならばとにかくエネルギッシュでストイックな芸術なんです。もちろん、ルーブルにあるような名画たちにも魅力を感じますし、私はそちらも大好きです。ジャンルが全く異なるので、そもそも比べる対象にはならないと思うのです。『高級ステーキも牛丼もどちらも良いところがあって好き』みたいな、そんな感じ。

 


スイス・ローザンヌにアールブリュット美術館があるのですが、以前そちらを訪れたときもすごい衝撃でした。#16で触れています。


 

 

今回、ローザンヌでもアールブリュット・ジャポネが偶然催されていたためパリの後に寄ってきましたが、そのことについてはまた今度。

 

 

そんなこんなで、アールブリュット・ジャポネⅡを見るためにパリに弾丸旅行でやって来たのです。日本人アーティストによる作品がパリでアールブリュット展を行うのはこれで2回目で、前回は2010年です。

 


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行くしかないでしょ。宿もモンマルトルにとった(治安が悪い分安い)し、パリ到着後すぐに荷物を宿に置いて、すぐにアル・サン・ピエールに向かいました。サクレ・クール寺院の純白に輝く建物の麓にあります。

 

 


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そして、到着。

 


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HPや看板と同じ絵が迎えてくれます。この絵だけで独特な世界がわかっていただけると思います。暖簾の中にはどんな「新たなお宝」が待っているのか、私はワクワクしてしまいます。笑

 


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入場料は9ユーロリーフレットをもらって、いざ中へ。

 


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中は意外にも混雑していましたが、日本人は私だけ。フランス人たちは作品自体に対して話しているようでしたが、私は作品に書いてある日本語が読めてしまうため、そこにも注目して楽しみました。



そう、アールブリュットには細かいところにまで作者のこだわりが感じられます。彼らが地道にルーティンを重ねてコツコツと完成させたストイックな作品や、私たちが失ってしまった純粋な感性で作られた作品、ありあまるエネルギーをぶつけた作品大好きなものを形にした作品などがたくさん並んでいます。中にはプロとして生業としている方もいらっしゃると思います。私はその点が不案内で申し訳ないのですが、個人的によかったと思う作品を紹介します。なお、作品の写真撮影はOKですが、フラッシュの使用は禁止です。

 

 


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まずは、アオキ タケル(青木尊)さん。今回の展示会の広告の絵を描いた方です。

 


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女性歌手の絵も描かれてました。八代亜紀さんとか、特徴をつかんでます。蛍光ペンで着色しているところがまたいい味を出しています。

 

 

あ、今回の目玉作品を発見。

 


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おぉ、これが…。ん?八代亜紀

 

 

まさかの八代の亜紀ちゃんの似顔絵でした。まさか、暖簾には名前が消えているのは、事務所の圧力か?笑

 

 


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ちなみに、近くにあった、ちあきなおみさんの似顔絵。亜紀ちゃんと似ているように見えるのは私が素人だからでしょう。青木さんにはこう見えているのです。芸術って正解がないものだから、否定はしてはいけないのです。そして、その捉え方が違うのも芸術の面白さかなぁ、と。私はこの4年間でそれを学びました。

 

 

どんどん紹介しよう。

 


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マツハシ タケル(説明がフランス語なので漢字は不明)さんは車が好きなようです。知人へのメッセージが周りに細かく書かれてました。

 


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フジタ ユウさんは数字に当てはめた絵を描かれてました。『じっけんしつ』『じゃけんしつ』という言葉が書いてありました。この方にとっては絵を描く上で大切なキーワードなのでしょう。

 

 


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アヤマ タカユキさんは動物の絵を木材に描く作品を展示していました。木の模様や形を活かした作品が素敵でした。フランス人も見とれてました。

 


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あとは、こちらもすごいです。ワタナベ ヨシヒロ(渡邊 義紘)さんの作品。何だかわかりますか?

 

 


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なんと、クヌギの葉で動物を作り上げているんです!これをHPで見て、絶対に見たいと思ったのです。ホント、これも素晴らしかったです。

 


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こちらは滋賀県近江学園の共同作品のようです。よーく見ると…。

 


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無数の顔が粘土で作られていて、全体を作り上げています。スイミー的発想に脱帽。顔一つひとつがまたかわいい顔をしているんです。

 

 


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こちらはタカハシ ヨシ(高橋 甫)さんの作品。細い黒ペン1本で何回も線を重ねて動きを出しているのが素晴らしい。

 

 

大満足して外に出ようとしたら、入口のチケットもぎりのおじさんに『リュックは前で抱えた方がいい』と言われました。さらに、出てから帰ろうとしたら『2階もあるよ』と教えてくれました。

 


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2階には螺旋階段で行きました。途中で、またしても『亜紀ちゃん』がお出迎え。笑

 

 

2階も宝の山でした。

 


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まずはコクボ ノリミツ(古久保 憲満)さんの作品は壁一面の絵で、紙を何枚も重ねて作り上げた『町』です。

 


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こんな細かい絵が10メートルくらい続いてました。完成までに何年かかったんだろう。夢溢れる世界がどこまでも続いてました。

 


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続いて、ミヤシタ ユキオさんの作品。近くで見ると…。

 


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英語が並んでいます。カラフルで、遠くから見ると虹のよう。

 

 


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ハマワキ シノブさんの粘土作品は、小さく作られた動物の体や顔が放射線状に広がっています。彼の作品は所々に置いてあり、どれも同じような作風(動物が異なる)ですごかったです。

 


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サワダ シンイチ(澤田 真一)さんの作品。段ボールなどで作られたミニチュア車です。それぞれ手のひらサイズ以下。こちらもフランス人たちを魅了していました。

 

 


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アルセ リュウスケさんの作品。冷蔵庫や洗濯機をこれまたミニチュアサイズで再現しています。素材はボール紙や広告、セロハンテープなど。

 


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年月の経過による変形も味があっていいですね。手作り感満載で。個人的には『ワンタッチでドアが開く』などの、広告や説明書に書かれている謳い文句が書いてあるところにほっこりしました。電化製品がこの方は大好きなんだなぁ。

 


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他にもたくさんいい作品がありましたが、キリがないのでこれくらいで。フランス人に、日本人アールブリュット作家の作品が受け入れられていたのが何だか嬉しかったです。

 

 

これを機にアールブリュットに対して興味を持っていただけたら幸いです。日本でも各地で行われていますので、これを機に興味をもたれた方は是非足を運んでみてください。都道府県レベルではなく、小さいものなら市町村レベルで無料の展示会が行われていたりします。詳しくは『アールブリュット 都道府県名』で検索していただけたら情報が手に入ると思います。彼らの作品を見るとエネルギーをもらえるし、温かい気持ちになれますよ。ほんと、純粋な作品ばかりなんです。

 


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最後に。同じ会場で広島の原爆に関する作品も展示されてました。中には目を背けたくなるような絵日記もあるのですが、戦争や原爆の悲惨さを伝えてました。アールブリュットとはまた違った目的で、日本の芸術作品がフランス人の心に響いていたと思います。