#220 東京で『触れる美術館』に行ってみた。① (2019.8)
工夫次第で、視覚障害者も美術を楽しむことができるのです。
東京の高田馬場にある、『手と目でみる教材ライブラリ』に行ってきました。どんなところかと言うと、視覚障害者のための触ることのできる美術品が置かれています。平面で描かれた絵画を石膏や3Dプリンタで立体的に作っているのです。このライブラリを創設した大内進先生は盲学校の元教諭で、大学の研究室のような感じですが、ここは宝の山がたくさん眠っています。イタリアのボローニャにあるアンテロス美術館(触ることのできる美術館)の東京分館なのですよ。
作品の一部を紹介します。
石膏は大内先生の手作りです。リアルですね。
原画を見ながら石膏で立体的にし、その石膏を基に3Dプリンタで作ります。3Dプリンタだと色を加えることができ、晴眼者(視覚障害のない人)も目で楽しむことができます。
ただし、これを触らせて、視覚障害者に対して絵のイメージが完全に伝わるかと言うと、それだけでは不十分なので、同じポーズを取らせたり説明を加えたりしながら補足します。それでもまだまだ難しいようなのですが、絵のイメージはかなり湧きやすくなります。工夫次第で、視覚障害者は美術を楽しむことができないという考えは覆されます。素晴らしい取り組みだと思います。
他にも
立体的な地図の紹介がありました。1枚目は東京、2枚目は大阪の地図です。ランドマークを立体化させることで観光名所の位置のイメージがしやすくなります。
これは、市販の地図に大内先生が道路を作図テープ、駅をラインストーンで付け加え、さらに建物と山を加えています。
山は3Dプリンタで高さと色を加え、地図を張り付けてました。等高線がすごくわかりやすくて、視覚障害者用だけではなく、普通校の社会の時間でも使えそう。いいアイディアだなぁ。
他には算数教育で使えそうなものもありました。
こちらは筆算練習用キットです。こちらはイタリア製で日本では作られていない(アメリカ製やフランス製はある)ためメジャーではないらしいのですが、点字の打たれたサイコロを並べ、筆算を練習させるものです。というのも、盲学校の計算と言えば算盤(つけ爪みたいな珠がついている盲人用算盤)か計算器が使われるのですが、筆算も工夫すれば指導できるのですね。そして、上下の向きを変えればサイコロの6面で点字数字の1~0(右端参照)が表せることに今日気づきました。
作成中でしたがイタリアの地図も州ごとにパズルが作られてました。
これは点字プリンタですが、右にあるのは40年前に作られた、大変貴重な初代プリンタがありました。
他にも色々あったのですが、時間がなくて2時間で失礼させていただきました。隅々まで見ていたら、多分丸三日はかかりそうな、ワクワクするものがたくさんありました。
アクセスは高田馬場駅の早稲田口を出て、そのまま早稲田通り沿いにあるのですが、何せ建物が分かりにくいです。表札が小さいですが3階にあります。目印は郵便局!不定期開館のため、完全予約制なのです。私は縁あって職場の方と一緒に行くことができましたが、個人申込も可能だと思います。ご興味のある方は是非!