#053 マラケシュでエネルギーチャージしてみた。 (2010.5)
2010年の5月にモロッコのマラケシュ(Marrakech)に行ってきました。ここで一番有名な観光名所はジャマ・エル・フナ広場(Place Djemaa el Fna)です。ジャマ・エル・フナ広場は「死者たちの広場」という意味で、昔は公開処刑の場所だったらしいですが、今では日没になると、露店商や大道芸人が集まり、夜を徹してお祭り会場のようになります。しかも365日。エネルギーに満ち溢れた、活気ある場所なのです。私はここに行ってエネルギーをもらったので、その時の話を今回は書こうと思います。
その前に、マラケシュに行った経緯を簡単に説明します。2010年の3月に、6年勤めていた職場を辞め、1か月の旅に出ようと決めました。予算は退職金100万円。行き先は中近東方面。なぜか当時の私には中東に惹かれるものがあったのです。(今思えば、「アラブの春」の前で治安が良かったのであの時に行っておいて正解でした。)
4月1日に無職になった私は、さっそく旅程を考え始めました。まず一番に行きたかったのはモロッコ。大学生の頃、同級生M(長期休暇の旅に海外放浪していた)の写真を見て、いつか行きたいと思っていたからです。次に行きたかったのはチュニジア。テレビで白い壁に青い窓枠の家が立ち並ぶ街並を見て、惹かれたからです。
そして、色々な人からの話を聞くうちに、気付けば日本→トルコ→エジプト→マルタ→チュニジア→モロッコ→UAE→日本という超過密スケジュールになってしまいました。そして、30歳の誕生日を迎えたばかりの5月8日に出国。30代初めての海外旅行です。
新年度が始まって間もない5月初旬に海外旅行をしている日本人の大半は無職でした。もちろん、私もその一人。行く先々で会う人に親切にしてもらったり、一緒に観光したりして楽しかったのですが、完全にふっきれていない自分がいました。もちろん、依願退職なのですが、「もう少し頑張れたんじゃないか」とか、「逃げたんじゃないか」とか、「周りは頑張って働いているのに退職して旅に出ていいのか」とか、そういうモヤモヤした気持ちが何となくずっと心にひっかかっていました。
その気持ちは旅の後半のモロッコに着いても続いていました。モロッコ最初の都市であるマラケシュのホテルに着いたのは22:00だったのですが、翌朝にエッサウィラに行くことになっていたのでジャマ・エル・フナ広場には行かずにゆっくりして過ごしました。(今思えば、ちょっとでもいいから行っておけばよかったなぁと思います…)
要塞都市エッサウィラ(Essaouira)は大西洋に面した、おしゃれな港町でした。カモメがやたらといました。マラケシュからバスで片道3時間で行けるので、日帰り旅行地としておすすめです。
そして、エッサウィラから帰ってきた夕方に、ジャマ・エル・フナ広場にタクシーで向かいました。着いた瞬間、屋台から立ち込める大量の湯気と、大道芸人たちが奏でる音楽と、広場内を歩く大勢の客たちの姿に圧倒されました。あと、バイクも縦横無尽に走り抜けていたなぁ。先進国ばかり行っていた私にとって、それらの国々とも、行ったばかりの中近東の国々とも違う光景に度肝を抜かれた感じです。何かが起きそうな予感…。ワクワクしてきました。
散策すると、民族衣装を着た大道芸人が謎の鈴を持って練り歩いてました。(写真撮影は有料なので注意)
色々な露店がありました。缶釣りをしていたり、スパイスや乾物や土産物を売っていたり、食堂だったり。大道芸人がアラビア語でコントをしていて、私にはさっぱり意味不明だったけど、 とにかくみんなウケてて楽しそうでした。
おなかが空いたので何か食べたいなぁと思っていたら勧誘のお兄ちゃんが英語で話しかけてきました。ベルベル語、アラビア語、フランス語が通じるモロッコでは、英語話者は貴重です。メニューを見たら私が食べたいと持っていたミートタジンがあったので、そこに決めました。料理を待っている間、勧誘のお兄ちゃんが色々と話しかけてくれました。彼の名前はAzizと言い、モロッコ人だけども顔は池内博之に似た感じが何となく親しみを覚えました。外見も性格も好青年だったなぁ。
そして、私の席から厨房の様子がよく見えて、面白いおじさん2人を発見しました。1人(おじさんA)はオバマ大統領似で、オバマの物まねをしてくれました。写真の奥に写っているもう1人(おじさんB)はおそらく日本人観光客から教えてもらったギャグを披露。「ミーヤーサーコーデス!!」と言いながら、ドヤ顔で宮迫ポーズをするのですが、若干古いのです。あとは「オモローー!!」(by 世界のナベアツ)とか。2人とも、帽子にストローを差し込み、ピンマイク風にしているところも芸が細かかったです。笑
そんなおじさん達のギャグに大笑いしていると料理が到着しました。熱々のミートタジンはトマトベースのソースにミートボールが煮込まれていて本当においしかったです。エジプトやチュニジアのイスラム料理と比べて、モロッコ料理は私の口に合いました。
ミントティーもさっぱりしていておいしかったです。でも、パンだけはパサパサに乾燥していてイマイチでした。笑
食べ終わったら、おじさんBが「よかったら厨房に来なよー」って言ってくれて、厨房に入らせてもらいました。そして、ボクサーの平仲信明似のおじさんCも入って一緒に記念写真。見納めに、「ミーヤーサーコーデス!!」をしてもらって、お別れ。
その時に、「この旅で初めて心の底から笑えたなぁ」、「この旅に出てよかったんだ」、「今を楽しもう」とようやく吹っ切れました。
吹っ切れた私はお土産物屋さんに行き、タジン鍋をいくつか購入しました。タジン鍋は色々な大きさのものがあり、料理用はもちろん、飾り用のものも充実していました。ちなみに、私の梱包が甘かったらしく、一番高くて大きかったタジン鍋は帰るまでの道中で軽いヒビが入ってしまいました…。やはり、割れやすいものは機内持ち込み荷物にすべきだったです…。といいつつも今でも我が家に飾ってありますが。
こうして、気持ちが軽くなった私はマラケシュにもっと滞在したかったのですが、何せ過密スケジュールなので翌朝にはメルズーガ砂漠へと出発しました。
そういえば、件の大学同級生Mが「インドとモロッコって似ているんだよ。」って言っていたことがあります。当時はモロッコしか知らなかったので比較しようがありませんでしたが、その1年半後にインド旅行をして、彼女の言っていることがわかる気がします。あの2つの国に共通するエネルギーや匂い(臭い?)や人懐っこさには辟易することもあるのですが、でも引き込まれる魅力があるんだよなぁ…。あ、インド人もすぐに日本のギャグを披露してくれるから、そんなところも似ているね。笑
私にエネルギーをチャージしてくれたのはこのお店(No.114)です。今でもやっているのかしら?ここは私にとっては「旅の聖地」。またいつか絶対に再訪したい場所です。その時には、日本の最新ギャグを教え込まないとね。笑