世界流離日記

『世界流離(さすらい)日記』と読みます。国内外の旅行での喜怒哀楽の経験を中心に投稿していきますのでよろしくお願いします。なお、このブログ上の画像の使用は禁止とさせていただきます。

#033 ブータンの学校に潜入してみた。 1日目① (2017.3)

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日本からバンコク経由でインドのグワハティ空港に到着し、陸路でブータンのサムトゥプジョンカから入国しました。サムトゥプジョンカからカリンまでの移動はひたすらグネグネ(時々ボコボコ)の山道でしたが、「これぞ海外旅行!」って感じの、非日常的な体験が楽しかったです。

 

 

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ブータンへの訪問目的はカリン(Khaling)で働く友人Yちゃんに会い、職場訪問をすることでした。Yちゃんと私は元々同じ職場で働いていて、2人で一緒にインド旅行をするほど仲良しでした。その後お互い転職した私たちが偶然にもまた同じ職場になり、そこにいたのが今回一緒に旅をした2人なのです。縁ですね。4人で仕事でもプライベートでも仲良くしていた中彼女は退職して、2016年夏からブータンで働き始めたのです。その職場が今回訪れたミュンセリン盲学校です。我々3人も日本の盲学校で勤務しているので、学校見学と同時に授業をさせてもらいました。

 

 

では、盲学校訪問1日目を振り返ります。

 

 

3月20日 午前

朝食

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朝ごはんは豆のお粥でした。前日の夜のスープと同じ、ちょっとだけスパイシーなところが体を温めてくれて、おいしかったです。

 

 

民族衣装キラ 

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民族衣装のゴ(男性用)とキラ(女性用)に着替えて、盲学校に向けて出発。ゴは日本の着物をひざ丈にしたような形状をしていますが、キラは布を巻き付けて、襟のあるジャケットを羽織る感じです。T氏のゴは、Yちゃんの同僚のKの私物を拝借(→後にKからプレゼントされる)。キラは旅行会社から貸してもらっており、Mさんのは鮮やかなキラでしたが、私はシックなデザインのキラで、どちらも色々な色や模様が織り込まれた美しい布でできていました。もちろん、私一人では着られないので、Yちゃんに着付けてもらいました。ブータンでは、大人も子どももゴかキラを着ています。

 

 

移動

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前夜は真っ暗で全く見えませんでしたが、朝外の景色を見たら、のどかな風景が広がっていました。アジアの途上国というと排気ガス等で空気が悪いことが多いのですが、カリンの空気はとにかくおいしかったです。

 

 

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盲学校までの道は細い畦道がひたすら続き、ぬかるんだ泥道があったり、木の板で橋や梯子がかかっていたりして、視覚障害者にはなかなかハードな道のりのように思えました。この環境に慣れている児童たちはスイスイと歩くようですが…。

 

 

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5分ほど歩いてミュンセリン盲学校に到着。いくつかの棟に分かれています。ちなみに、ブータンには盲学校が1校しかいないので、ブータン中の視覚障害をもった児童たちがここで教育を受けています。

 

 

私たちが到着してほどなくすると8:30にベルが鳴りました。朝礼の始まる合図です。

 

 

朝礼

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はじめにみんなで体操をしていました。アキレス腱伸ばしのやり方が日本と違ってました。全盲の児童もいるので、職員が指導や補助に入ってました。

 

 

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みんなで「one, two, three,four...」とカウントしながらやっていました。

 

 

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体操の後はロの字型に並び直し、お祈りの歌と国歌をみんなで歌います。アカペラで歌う国歌がとても美しい曲で、思わず鳥肌が立ちました。美しい自然の中に響く、彼らの美しい声。私たち日本人と比べて、ブータン人の愛国心と宗教に対する思いを強く感じました。

 

 

我々が学校訪問をすることはYちゃんが事前に学校側に伝えておいてくれたので、朝礼の後にそれぞれが簡単な自己紹介をしました。ブータン公用語はゾンカ語と英語なので英語で話しました。

 

 

1時間目 英語

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Yちゃんが時間割を調節してくれたので、1時間目は英語の授業でした。まずMさんが君が代と我が勤務校の校歌を聞かせました。恐らく、彼らが初めて聞く日本の歌だったはず。それから、日本の盲学校の生徒が書いた英文をブータンの盲学校の児童に読んでもらい、返事を書いてもらいました。

 

 

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アルファベットは点字でも墨字(点字ではない文字=筆記具やパソコンで書かれた文字)でも全世界共通の形なので、みんなワクワクしながら読んでいました。盲学校に限らず、日本の生徒たちは普段英語を勉強しても実際に使う機会がないものですが、英語という共通語を介して異国に住む同じ年齢くらいの学生との国際交流はとてもいい機会だと思います。さすがMさん。彼らは日本に対してどんなイメージを持ったのかな?返事を書いてくるのは翌朝の授業までの宿題にしました。

 

 

2時間目 美術

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2時間目はT氏による図工の授業でした。日本の盲学校では図工や美術の時間に粘土を使うことが多いのですが、ミュンセリン盲学校では美術教育がこれまでありませんでした。過去形なのは、私たちが訪問する少し前からYちゃんが図工の授業を担当することになったからです。

 

 

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T氏が日本から持参した2種類の粘土(油粘土と土粘土)を使って、2つの粘土の違いを触覚や嗅覚から感じさせた後、児童たちが手のひらで丸めたり、机に打ち付けたり、指で穴を開けてみたり、紐を作ったりしていました。粘土を触るのが初めての児童たちはとても楽しそう。慣れない英語を使って授業をするT氏もとても楽しそうで、それが児童たちにも十分伝わっていました。さすがグローバルT、やるねー。

 

 

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紐から蛇に変身させ、「誰が一番上手に蛇を作ったか?」という発表会が行われ、みんなで触りやっこしました。とある弱視の児童がリアルな蛇を使っていてびっくり。他の児童も「本物みたいだー」と大絶賛していました。

 

 

休憩時間

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2時間目の後にティータイムの時間があるので、私たちも職員室に混ぜてもらいました。ここでも、ティ―タイムのお供はジャ(ミルクティー)にビスケット。寒いカリンでは温かい飲み物が本当にありがたいです。続々と職員室に戻って来る先生方に日本のお菓子を配りました。

 

 

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うまい棒納豆味は意外にもブータン人に好評でした。Yちゃんも感激。笑

ちなみに、この方がミュンセリンの校長先生です。

 

 

3時間目 校内見学

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YちゃんとK(ブータン人)が私たちを案内してくれました。ちなみにKとは前夜からYちゃんの家で一緒に飲んでいるので、既に仲良しです。笑

 

 

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外には芝生コートがありました。ここでYちゃんの体育の授業が行われているそうです。

 

 

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ブータンの国技であるダツェ(アーチェリーみたいなスポーツのようです)の的がありました。成人男性の足の大きさくらいの、とても小さい的でした。

 

 

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グランドはぱっと見綺麗に見えますが、割れたレンガやビール瓶、大きな石などが転がっていて、視覚障害者がケガしないか不安になる環境でした。しかも、このビール瓶は職員が夜の宴でここのグランドを利用しているからのようで…。うーん。

 

 

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グラウンドの外は崖と川でした。ボールを使う授業をやった暁には、ホームラン必至な状態です。

 

 

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敷地内にチベット仏教の仏具であるマニ車がありました。これを時計回りに回すと、回転させた数だけ経を唱えるのと同じ意味になるのだとか。私はこのチベット仏教の、いい意味でゆるーい考え方が好きです。

 

 

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最後に寄宿舎を見せてもらいました。改装中ということで家具が外に置かれていました。

 

 

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寄宿舎の入り口にあった「ポー」の絵。ブータンに来る前に寄ったバンコクでも同じような「シンボル」があり、我々の話題をかっさらってましたが、ここブータンでもポーはありがたい存在。魔除けや子孫繁栄として、信仰されています。ということで、私たちが今から入る寄宿舎は男子用ということですね。笑

 

 

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2階建ての寄宿舎には大部屋から中部屋までさまざま。大部屋はベッドがギュウギュウ詰めでした。これも改装中だったからだと思います。

 

 

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とある部屋の天井には数学や理科の公式が張られていました。以前勤めていた方が作られたそうです。天井に貼られていた文字を盲学校の生徒は読めるのかなぁ。

 

 

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床が時々きしみ、二条城の「ウグイス張り」みたいな音がしました。

 

 

4時間目 授業見学

Yちゃんは授業だったので、Kが校内案内をしてくれました。教室に入って、授業を見せてもらいました。

 

 

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校内のとある教室では本を読んでいる児童がいました。まだフォニックスをやっていないのか、w-h-a-t-   i-s…と、アルファベットを読む練習をしているようでした。

 

 

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その点字版がこれ。ブータン点字紙は日本のものと比べて大きく、正方形の形をしていました。

 

 

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他のクラスに行くと、パーキンス(タイプライター)がありました。日本では点字板とパーキンスが主流で、1人1台支給されていますが、この盲学校ではパーキンスは1台しかないとのことです。

 

 

給食

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給食の時間になりました。ご厚意で私たちも同じものをいただけるとのこと。今日のメニューはカレーとスープでした。

 

 

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児童たちは自分の番号のついた食器をもって並びます。

 

 

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先生方が次々に配膳していきます。ここで驚いたのが、先生方が児童一人ひとりが食べる量や好き嫌いを把握していること。量を少なめにしたり、スープだけを配膳したり、カレーとスープを同じ食器によそったりと、児童生徒の実態をちゃんと把握しているんだなーと感心しました。

 

 

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日本みたいにみんなで一緒にいただきますをする習慣はないので、もらった人から食べ、食べ終わったら食器を洗って帰るという感じでした。

 

 

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白いカレーもスープもそれほど辛くなかったです。手前のカレーはYちゃんがくれた、前夜の夕食の残りのカレーで、近くのレストランで注文してくれたものです。インドカレーに似ていたけど、お肉が柔らかくておいしかったです。

 

 

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その中でも私が一番気に入ったのはエゼと呼ばれる、野菜とチーズを和えたものです。それほど辛くありません。

なんと校長先生のお手製のエゼは、パクチーたっぷりで本当においしかった!Kを見ていても思うのですが、ブータンの男性は本当によく働き、動きます。

 

 

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それは子どもたちも一緒で、全盲や重複障害の児童のお世話係は教師ではなく児童でした。日本でももちろんそういうことはあるのですが、ブータンの子どもたちは、日本では教師がする仕事のようなことも男女ともに行っていました。自分のことを後回しにして友達のお世話をするミュンセリン盲の子どもたちってすごいなー。

 

 

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私たち以外誰もいなくなった食堂に、新たな「お客様」が。犬は床を、ハトやスズメは机の上を「パトロールします。それぞれ縄張りがあるんですね。笑 

 

 

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残飯は食堂の外で犬や鳥の餌になります。時間になると犬たちが集まってきて、Kの周りに来ます。盲学校周辺の野良犬は食に困りません。Yちゃんの家でも、残飯は野良犬のものだったし…。

 

本当は一日分をまとめて投稿をしようと思っていましたが、まだまだ長くなりそうなので、午後については#034で書こうと思います。